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コラム

【前編】AMH(抗ミュラー管ホルモン)について

女性は、自分の卵子で何歳まで妊娠できると思いますか?

日本では、生殖補助医療による妊娠だと40代後半の出産も可能と思われていますが、本来40代での妊娠・出産は難しく、体外受精などの生殖補助医療を行っても、30歳の総治療あたりの生産率(流産などを除いた実際に赤ちゃんが生まれてくる率)21.8%に対し、40歳では9.8%と半分以下になります。これは、加齢により卵子の質が低下することを表しています。(2019年日本産婦人科学会ARTデータブックより)

卵子はあとどれくらい残ってる?

最近よく聞かれる卵子の老化という言葉が表すように、高齢になるにつれて、卵子の質が低下することに加えて、卵子の数も減少することで、妊孕性は低下します。

妊孕性を調べることは難しいのですが、血中のAMH【抗ミュラー管ホルモン】という、発育途中の卵胞から分泌されるホルモンを調べることにより、卵子があとどのくらい残っているかを知ることができます。

今回は、前編・後編と2回に分けて、「卵子」と「卵巣の予備能を表すAMH」について、詳しくお話しさせて頂きたいと思います。

卵子は毎日つくられてるの?

答えは、NOです。
女性の卵子は生まれる前から作られており、卵子の個数は、下の図のように、胎生20週くらいのまだ生まれていない赤ちゃんの時期をピークに急速に減少していき、男性の精子と違って新たに作られることはありません。ですので、実際の年齢+1歳が「卵子の年齢」と考えることもできます。

加齢による卵子の数の変化

卵子の元である「卵祖細胞」(卵子の祖先、みたいな感じでしょうか)と言われる段階から二回の減数分裂を経て最終的に卵子となるのですが、一回目の減数分裂の途中で一旦停止します。女性が成長して排卵するようになると、排卵直前に減数分裂が再開されますが、再開されるまでの時間が長いほど21トリソミー(Down症候群)、18トリソミーなどの染色体の数の異常が増えることも知られています。さらに卵子の質も低下することによって妊娠率が下がっていくと考えられています。

AMH測定のメリットとは

AMHは、あくまでどのくらい卵子が残っているのかという間接的な指標であり、卵子の質を表すものではないのですが、測定の利点を大きく3つほど挙げてみました。

1.卵子がどのくらい残っているか知ることで、結婚・妊娠などのライフプランを立てやすい

AMHが低ければ、将来妊娠を希望する場合、早めの計画が必要となります。
なかなか赤ちゃんができないと不妊治療の病院に行ってみたら、実は卵子の残りが少なかったと知り、後悔される方もいらっしゃいます。今は妊娠を考えていない場合も、いつか妊娠をと考えているのであれば、先にご自身の状態を知っておくことはとても大切です。

2.不妊治療をしている場合は、治療ステップを進める目安となる

卵子の残りが少ない場合の妊活は、自分で基礎体温や排卵検査薬を利用してご夫婦でトライする期間を短めにして、不妊治療専門施設を受診することをおすすめします。赤ちゃんを早く授かりたい方や、不妊治療を考えている方は、医師と相談し、早めに人工授精や体外受精(生殖補助医療)1へステップアップしてよいかもしれません。

3.体外受精を行う際に卵巣刺激方法選択の指標となる

不妊治療で体外受精を行う場合には、AMHの値が高い方に強い排卵誘発法で卵巣を刺激すると、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)といって卵巣が腫れてしまうリスクが上昇するため、よりマイルドな刺激方法を選択することがあります。AMHの値が低い場合は、強い排卵誘発法を選択、あるいは、年齢や状況によって刺激しても獲得できる卵子の数が少ないことが予測される場合は、あえて低刺激を選択するなど、相談しています。

「体外受精でたくさん卵子を得ると早く閉経するんじゃないですか?」と聞かれる方がいますが、これは間違いです。私たちは、毎月1つの卵胞(卵子の入っているふくろ)が育って排卵しているように見えますが、実は、その育った主席卵胞と呼ばれる卵胞以外も存在しており、一回の月経周期で成熟しないまま約1000個が消失しています。
人工的な卵巣刺激によって、本来消失していく卵胞を回収しているため、通常より早く卵子が消費されるということではありませんので、ご安心下さい。

このように、AMHを早めに知っておくことで、様々なメリットがあるのですが、ここでひとつ誤解してはいけない点があります。
AMHは、「卵子の数」の目安となるわけで、「卵子の質」を表すのではないということです
簡単に言うと、「AMH値は妊娠のしやすさを表す値ではない」ということです。AMHが高いから妊娠しやすい、低いから妊娠できないというわけではありません
後編では、この点について詳しくお話したいと思います。

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  1. 体外受精(生殖補助医療)とは、卵巣から卵子を採取し、体外で精子と授精させ、受精卵を子宮に移植する方法
    1978 年世界初の体外受精児がイギリスで生まれ、日本では 1983 年に仙台市の東北大学医学部付属病院にて初の体外受精児が生まれました

荒木依理

不妊症看護認定看護師
生殖医療コーディネーター