【後編】卵子凍結について~卵子凍結の実際~
先月は、「卵子凍結」前編にて、社会的適応の卵子凍結について、お話させて頂きました。
今月は、後編「卵子凍結の実際」について、ご紹介できればと思います。
採卵(卵子を回収する手術)とは
卵子凍結を行うには、手術が必要になります。
月経中に診察と採血を行い、卵巣の状態を確認してから排卵誘発剤を使用して、卵胞を発育させます。排卵誘発剤は自己注射になることが一般的です。おおよそ排卵誘発剤を12-14日程度使用していきます。排卵誘発剤を使用している間、2-3日に一回程度の外来通院を行い、採卵日(手術の日)を決定します。
採卵日には、卵巣に針を刺して、卵巣内で育った卵胞の中から、卵子を採取していきます。
STEP1 インフォームドコンセント
まず、手術に必要な術前検査(感染症や血液型、貧血のチェックなど)を行い、治療で得られるメリットや副作用などのリスクなどを十分に説明を受けた上で同意書を提出します。前編でご紹介した「社会的適応の卵子凍結」についての内容も情報として知っておいて頂くと良いかと思います。
また、凍結した卵子を使用する際には、顕微授精を行い、胚移植をすることが必須であり、将来のパートナーの理解も必要になってきます。顕微授精とは、卵子の中に精子を針で直接入れる方法です。
社会的適応の卵子凍結は、保険適用外ですので、自費診療になります。
不明な点や不安があれば、遠慮せずに医師、スタッフに声をかけてみましょう。
STEP2 治療開始~排卵誘発剤による卵巣刺激~
一般的に、1回の採卵で複数の卵子を得ることができるよう、注射や内服の排卵誘発剤を使用します。副作用としては、重篤なものに卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と呼ばれるものがあります。過剰な卵巣刺激で卵巣が腫れ、重症化すると血栓症のリスクが上昇し、腹痛、吐き気、呼吸困難などで入院が必要なことがあります。
OHSSのリスクが高い患者様には、あらかじめ使用する薬剤の変更で予防することが重要で、熟練した医師のもとで治療を行うことが大切です。
STEP3 採卵
経腟超音波にガイドを付けて針をセットし、卵巣の近くまで進めて、卵巣内の卵胞と呼ばれるふくろを刺し、その中の卵子を卵胞液と共に吸引して回収します。
卵胞がたくさんできていても、その中に卵子がない場合や、採れた卵子の状態が悪く凍結できない場合もあるため、手術前の卵胞の数だけ卵子が得られるわけではありません。
採卵のリスクには、腹痛、腹腔内出血、感染などがあります。
STEP4 凍結・融解・受精
-196℃の液体窒素で凍結します。
凍結期間中は、卵子の質が低下することはありませんが、凍結や融解自体の操作で負担がかかり、使用時にうまく融解できない場合があります。
また、凍結卵子を融解した後には、精子との顕微授精が必要になります。
顕微授精の当日に、精子を採取してもらう必要があり、パートナーの協力が必要です。
精子の採取方法は、男性側に問題がなければ容器に採ってもらうので、手術は必要ありません。
STEP5 移植
凍結卵子を使用の際、精子との受精がうまくいき正常発育できた受精卵(胚)は、3-5日程度体外で培養され、子宮に移植されます。
カテーテルに胚を吸い、膣から挿入して子宮の奥に戻す方法です。
移植のリスクには、軽度の腹痛、感染などがあります。
凍結卵子を保有することについて
卵子凍結は、以前に比べて凍結技術も向上し、将来の妊孕性温存の選択肢のひとつです。
また、凍結卵子を保管していても、それを使わず、妊娠しようと思った時に、ご自身での妊活や一般不妊治療からトライしてみることも可能です。
迷われている方は、施設のカウンセリング利用や医師へ相談してみることをお勧めします。
皆様にとって、後悔のない(少ない)幸せなライフプランの選択をして頂きたいと願っております