月経不順や無月経は不妊につながる!~後悔しないために知っておくべきこと
月経不順は不妊の原因となる可能性があります
月経不順はそれほど珍しくない状態で「今月少し遅れた・・・」「2週間前にきたばかりなのにまたきた・・・」など経験したことがある方もいると思います。
また、月経不順を経験しても「少し遅れた以外は何ともないから」「出血量も変わらないし」と軽く考えてそのまま放置してしまっている方も多くいます。
しかし、月経は卵巣の働き自体を反映していますので、月経不順が卵巣機能不全などの不妊の原因になる疾患の症状を表している可能性があります。また月経不順は排卵時期がばらばらであることを表しているため、妊娠しやすい時期を予測することが難しくなります。そのため、月経管理のアプリを用いても、月経不順の人は排卵日を正確に予測ができず、妊娠しにくいということはよく知られています。したがって、月経不順を軽く考えず、何度か繰り返すようなら一度詳しく検査してもらうことが大切です。
月経不順が繰り返し起こる、数ヶ月にわたって月経が来ないなどの場合は、卵巣自体の機能や卵胞の発育もしくは排卵に関与するホルモンの機能に異常が生じている可能性もあります。無月経や無排卵が長期間続くと、卵胞から分泌される女性ホルモンが長期的に低下することで、子宮が萎縮してしまい、妊娠しにくい体になってしまうこともあります。また卵巣機能不全のように卵子の残り数が極端に少なくなっている状況も、将来的に妊娠できるチャンスを減らしてしまいます。
月経不順になったら、まずは原因を探しましょう。例えば、多忙で疲労が溜まっている、ストレスが溜まっている、睡眠不足が続いている、などで体もストレスを感じると、プロラクチンと呼ばれるホルモンが上昇し、月経周期が一時的に乱れることもあります。しかしながら、月経不順が続く場合などには、ホルモンのバランスが乱れている可能性があるため、放っておいてはいけません。
将来、妊娠したくなったときに後悔しないように、自分の体に向き合うこと、自分の将来について考えることで、今すべきことをするように心掛けましょう。
月経不順とは?
月経は正常の状態なら25~38日の間に決まった周期で月経がきて、3~7日間出血します。しかし、月経不順は周期ごとの変動が6日以内であることをいいます。昔から月経周期が不規則な方、ストレスなどの原因があって数ヶ月だけ月経周期が不規則な方、30代になったら急に月経周期が不規則になり始めた方などさまざまな方がいらっしゃいます。
月経不順の方に対しては原因を精査してから治療していきます。
月経不順の治療は、妊娠を望むかどうかにより大きく異なります。
直近で妊娠を望まない方のなかで、まだ思春期の方なら、排卵が未確立なだけで成長すれば規則正しい周期になってくる方もいるため、しばらく様子をみることがあります。月経不順や月経痛が辛い方には、二次性徴の終了を待って低用量ピルなどを処方することもあります。
肥満が原因の方には適切なダイエット方法の指導、ストレスが原因の方には、ストレスに対処する方法や出来るだけストレスフリーな環境を整えるための指導などを行い、原因を取り除いていきます。
そして妊娠をすぐに希望している方は、月経不順の原因を精査した上で、卵胞発育や排卵がしっかり起こっているのかどうかを確認する必要があります。卵胞発育や排卵が起こっている場合であっても、排卵日が推定しにくい場合、排卵2日前から排卵後24時間という妊娠しやすい時期を特定することが難しくなります。通院する場合にはタイミング療法といって経腟エコーで排卵日を推定する方法を行う場合があります。排卵まで卵胞発育が起こっていない場合には、排卵誘発剤を服用して卵胞発育を促し、排卵日を推定していきます。
無排卵周期症とは?
無排卵周期症とは、言葉通りで排卵は起こらないけれども、月経は起きていることをいいます。無排卵周期症の月経間隔は長いことが多く、正常な月経周期が25~38日ですが、無排卵周期の月経周期は39日~数ヶ月にもなります。これは正常な方に比べると卵胞の成熟が遅く卵胞期が長いため、子宮の内膜が厚くなりすぎてしまい、耐えきれなくなって出血すると考えられています。排卵まで育てなかった卵胞が縮むことで女性ホルモンが低下してしまい、子宮内膜から出血するという機序も考えられています。なお、無排卵周期症の特徴的な症状としては、出血量が少ないこともあげられています。
自分が無排卵周期症かどうかを月経周期だけで判断することは難しいかもしれませんが、基礎体温を測定することで知ることができます。正常な方は、排卵後に黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されることで0.3~0.5℃体温が上昇しますが、無排卵月経の方は体温の上昇がほとんどありません。基礎体温のグラフもガタガタになってしまう場合がほとんどです。
無排卵周期症は、妊娠したいと思っていないときはそれほど気にしていない方もいるかもしれません。しかし、卵巣機能低下が原因で月経不順となっている場合には、卵子の残り数がかなり減っているサインですので、放っておくと卵子がなくなり将来不妊になる可能性が高くなります。そのため、将来子供が欲しい方は、出来るだけ早く婦人科を受診をした方がよいでしょう。また、無排卵周期症が長期的に続いている場合には、排卵後の黄体ホルモンの分泌がなく、女性ホルモンのみが持続的に分泌されている状態となります。持続的な女性ホルモンの分泌は子宮体癌のリスクを高めるため、放置せずに早期介入が大切になります。
無月経とは
無月経とは言葉通り、月経がない状態をいいます。無月経は生理的無月経と病的無月経に分けることができます。
生理的無月経は、妊娠中や初経前、閉経後など月経なくても病気ではなく治療が必要のない状態をいいます。一方病的無月経は、正常ならあるはず月経が何らかの異常により来ない状態をいいます。
さらに病的無月経は、原発性無月経と続発性無月経に分けられます。
原発性無月経は18歳以上になっても初経がこない状態をいい、続発性無月経はもともと月経が来ていた方に3ヶ月以上月経がこない状態をいいます。
無月経は放置しておくと、状態によっては様々な病気を発症するリスクが高まります。例えば、無月経では通常無排卵の状況を反映しているので妊娠するチャンスが少なく不妊になり得ますし、卵巣機能不全のように持続的に女性ホルモンが分泌されていない状況では将来、骨粗鬆症になるリスクが高まります。また、多嚢胞性卵巣症候群のように持続的に女性ホルモンが分泌されているようなタイプの無月経では、子宮体がんなどの発症リスクが高くなります。いずれの状況であっても、出来るだけ早く専門家に診察してもらい適切な治療を受けるようにしてください。
排卵障害が起こる原因とは?
排卵は、脳下垂体から分泌された卵胞刺激ホルモン(FSH)が卵巣に作用して卵胞を発育させ、黄体化ホルモン(LH)が成熟した卵胞に作用して排卵を引き起こしています。
排卵障害の主な原因は、多嚢胞性卵巣症候群や早発卵巣不全、視床下部性排卵障害、高プロラクチン血症などがあります。以下で、もう少し詳しくこれらについてご紹介します。
多嚢胞性卵巣症候群とは?
卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)のバランスが崩れることで、無排卵や無月経といった月経の異常を引き起こしている状態です。無月経の方や月経不順の一部の方は、卵胞が排卵するまで順調に発育していないことが原因である場合があります。排卵していなければ、妊娠できない状態ということになります。
早発卵巣不全とは?
早発卵巣不全とは、40歳未満、4ヶ月以上の続発性無月経、閉経期のようなホルモンバランスを特徴とする状態のことです。
もともと28-30日周期で月経が順調にきていた方が、24-26日周期なるなど周期が短くなってきた場合は、早発卵巣不全に至る経過を見ている可能性があります。また早発卵巣不全では、月経不順以外の自覚症状があらわれることはほとんどなく、月経不順が自覚される頃にはかなり進行している場合が多いため、注意が必要です。なお、AMHを採血で調べることにより、将来早発卵巣不全になるリスクをある程度予測することができます。早発卵巣不全になってしまった場合には、女性ホルモンが長期間少ない状態が続くため、健常な人よりも早く骨粗鬆症や認知症となるリスクが高くなります。診断後は、50歳前後までのホルモン補充療法が推奨されています。ホルモン補充療法をしながら排卵の時期を観察することで、妊娠を目指す不妊治療も行われています。
視床下部性排卵障害とは?
視床下部性排卵障害とは、脳の視床下部・下垂体という器官から排卵をコントロールしている卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)が分泌されず、排卵が起こらなくなることです。
視床下部性排卵障害が起こる原因には、過度なダイエットやストレスなどがあります。
高プロラクチン血症とは?
高プロラクチン血症とは、プロラクチンというホルモンの濃度が血液中で高くなってしまう状態のことです。なお、プロラクチンが上昇すると乳汁分泌などの症状がみられるようになります。
また卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)の分泌バランスが乱れるため、排卵障害が起こり不妊症の原因になることもあります。
将来後悔しないように不妊や不妊予防について学びましょう
月経不順と不妊の関係についてご紹介しました。月経不順は不妊の原因になる可能性があります。月経が遅れているだけだからと軽く考えずに、専門家に診察してもらうことをおすすめします。
また、これをきっかけに不妊や不妊予防について学び、正しい知識を身につけ、将来後悔しないための行動がとれるようになりましょう。