【インタビュー】42歳で治療開始。病院に行くまで知らなかった「不妊」のこと。

晩婚化が進む日本では、5.5組に1組のカップルが不妊の検査・治療経験者です。しかし、不妊がごく身近であるにもかかわらず、不妊治療について知るきっかけがあまりないという現状があります。

多くの方が不妊治療や不妊予防について考えるきっかけにしていただければと思いまして、今回実際に不妊治療を受けている方にお話を伺わせてもらいました。

40代になるとこんなに妊娠しにくいと知らなかった

不妊治療を始めるきっかけや経緯、決断するときに感じたハードルなどはありましたか?

Aさん:私は39歳で結婚して子供はいずれできれば良い程度に考えていました。周りに30代後半や40代になってから出産している方もいましたし、高齢になると妊娠しにくくなるという不妊についての知識があまりなかったためそれほど深刻に考えていませんでした。

しかし、結婚して3年ぐらい経っても妊娠しなかったため、これは厳しいのかもしれないと思うようになりました。そのとき毎年子宮頸がんの検診を受けているクリニックの先生に相談したら、年齢的に猶予がないから子供が欲しいならすぐに不妊専門の病院に行ってください、と言われてやっと不妊治療を受けなければ妊娠は難しい状況にあると気づきました。

初めて不妊専門の病院に行かれたのは、おいくつのときでしょうか?

Aさん:42歳のときです。今は不妊についての知識があるため、年齢的に不妊治療に取りかかるには遅く、最終的に出産できないかもしれないということはわかりますが、その当時はわからなかったです。

不妊のことを話すのはタブーというような面があるため、周りからその話題が聞こえてくることもありませんでした。そのため、不妊についての情報は、自分で調べないとわからないということを感じました。

同僚が不妊治療に協力してくれるからこそ申し訳ない気持ちになる

不妊治療を受けようと決めたとき、困ったこととかありましたか?

Aさん:仕事と不妊治療を両立させるのが一番難しいです。最初に受診して、検査や治療のスケジュールを聞いた時点で、仕事に支障が出ることはわかりました。幸い、不妊治療に対して職場の理解やサポートは手厚く、急なシフト変更を頻繁にお願いしても同僚はみんな協力してくれています。しかし、協力してくれるからこそ申し訳ないという気持ちが強く、自分の中では未だに消化しきれていません。

お子様がいるため夜勤ができない同僚もいるのですが、育児に関しても職場の理解やサポートは手厚いため、考え方によってはそれと似たような感じだと思えばいいのかもしれないですが、不妊治療のためとなると申し訳ない気持ちが強くて、育児と同じように考えることは難しかったです。次の診察予定が、前の診察で決まっていくため、あらかじめシフトに申請を出すことが難しく、シフトが決まってから急に変更をお願いするのが、同僚に迷惑をかけてしまい申し訳ない気持ちになりました。

休暇を取ったり、退職したりすれば気持ちの面では楽になるのかもしれないですけど、そうすると金銭的に厳しくなってしまうため、どうすればよいのかすごく悩みました。実際に通院してみると、想像していたよりも仕事と不妊治療を両立させるのは難しく、職場の協力が不可欠であることがわかりました。

不妊治療を受ける上で、家族とのコミュニケーションで気をつけていることはありますか?

Aさん:主人は、精子検査での問題がなかったため、私が不妊治療を受けていても生活に大きな変化はなかったと思います。夫は、体外受精の当日に向けて仕事を調整してくれたり、治療に協力的でした。どうしても女性側の通院頻度が多くなるため、時間的な拘束や身体的負担は大きくなりがちです。男性側の生活には大きな変化がないため、なかには無関心だったりする人もいることはネットなどの情報で知っていました。女性側は、不妊に関する悩みを一人で抱え込み、不妊治療がうまくいかないストレスで、抑うつ状態になってしまう人もいます。幸い、私たち夫婦は、必要な検査や治療のスケジュール、内容などの情報を共有し、体外受精を始めるという方針の決断を二人ですることができたことは良かったと思います。また、どのくらい治療を続けるのか、それでも出産できなかったらどうするかなど、自分たちの将来について向き合えたのも良かったと思います。

母には、つい最近まで不妊治療を受けていることを言っていませんでした。余計な心配をかけてしまうことがわかっていたので、不妊治療を受けていることは言えなかったです。最近、実家に引っ越し、私がクリニックに通院していることもわかってしまうため、やっと話しました。実際話してみると、子供を持つことや不妊治療を続けるかどうかということに関して、自分の意見をいってくれたり、私の意見を尊重してくれたり、サポートしてくれています。

不妊治療を受けている仲間が欲しいと思ったことはありますか?

Aさん:仲間が欲しいとは思いませんでしたが必要な情報は欲しいため、不妊治療を受けている方のブログやインスタグラムなどを見ていました。

新しい情報を知り治療法を変えようと決めた

どのような不妊治療を受けていますか?

Aさん:希望すれば人工授精から受けることができたのですが年齢的なこともあったので、最初から体外受精を受けています。

最初に通院していたクリニックでは2年間治療を受けました。そちらのクリニックでは高刺激法で採卵を行っていましたが、あまり刺激が強いと徐々に卵巣が疲れていってしまい質の良い卵が取れなくなるという情報を見かけたため、今のクリニックに転院しました。クリニックによっては、高刺激も自然周期などの低刺激も、どちらとも対応してくれるところも多いと聞きました。

今のクリニックは、まだ通院を始めて3ヶ月目です。生理周期ごとに7~8回通院して、自然周期で採卵しています。生理がきたらエコーで卵胞の発育を見て、育ってきたら自然と排卵するタイミングを待ち採卵する方法です。採卵日の2日前の夜に卵を成熟させるために点鼻薬をさしますが、卵を育てるために注射も飲み薬も使っていません。排卵前にエコーで卵胞を見て、小さい場合だけ卵胞の発育を促す注射を打ちますが、今まで1回しか打ったことはないです。

不妊治療を受けていることで体の面で負担を感じていることはありますか?

Aさん:注射を打つとお腹が張る、気持ち悪くなるとか聞いたことがあるのですが、私は注射を打っているときも全くありませんでした。人によって、症状の出方は変わると思います。

しかし、不妊治療に影響が出ないように出来るだけ他の薬を飲みたくないと思っているので、それが辛いときがあります。本当は飲んでも影響ないのかもしれないのですが、持病の慢性蕁麻疹や頭痛止めの薬も飲まないようにしています。内服薬は併用していても、不妊治療に悪影響のない薬も多いため、主治医に確認することが大切です。

長期に渡る不妊治療は金銭的負担が大きい

先ほどお聞きした仕事や体のこと以外で不妊治療を受けているときに負担に感じることはありましたか?

Aさん:不妊治療を受ける期間が長くなると金銭的な負担はとても大きいです。
1周期に50~60万円かかるので、それを年に7回もやると大きな負担になります。

-治療の目処が立たないとなると、金銭的負担も続きますね。

お医者様からもう妊娠する可能性は無いといわれたら諦めもつくと思うのですが、確率は低くても、0%ではないためそのようには言えないのだと思います。前回の治療では受精卵が短期間でも一度着床する化学流産までいったのでまだ諦めがつかないです。主人は私の体を心配していますが、納得するまでやっていいよと言って見守ってくれています。治療がうまくいかないたびに、どのくらいの回数治療をするのか、いつまで治療をするのかなど夫婦で話し合うようにしています。

不妊治療が上手くいかないために精神的に落ち込んだときの切り替え方法などありますか?

Aさん:今回はダメでしたとか言われると精神的に落ち込むことが多いですが、1回泣いて次の日になったら立て直していくということを心がけています。夫や家族に話すことで、自分の気持ちも少しは楽になります。職場では切り替えて忘れるようにしています。職場に来れば他の話でも聞いてくれる同僚がいますし、不妊治療のことだけ考えなくてすむため、仕事があることに助けられていると感じています。

最後に不妊治療や不妊予防などについて思うことがあればお話しして頂きたいです

Aさん:私は情報がない状態で不妊治療を始めたため、もっと身近に情報があればよかったなと思います。不妊治療はどのようなものか、年齢と妊娠の関係性などの情報がもっと身近にあれば、自分の年齢と経験を照らし合わせたときに、どのような状況に置かれているのかもっと早く判断し不妊治療を受けられたと感じました。
不妊治療のことを扱ったニュースはありますが、自分のこととして思えずに軽く考えて聞き流してしまっていました。

国からの補助金1が3回目までは一回につき上限30万円2がもらえるのですが、それ以降は全て自己負担になってしまうので、年齢的に保険適応から外れる可能性もあるのですが、補助金よりも保険適応にしてほしいと思っています。
特にそれほど貯金がない20~30歳の若い女性が体外受精を受ける場合には、6回目まで一回30万円の助成金3がもらえるのですが、保険適応になった方が負担が少ないのではないかと思います。


Aさんからお話を伺い、現状では不妊治療を受けることはさまざまな困難が伴い、まだハードルが高いと感じました。

Aさんもお話しされていたように、今はまだ自分で積極的に探さなくては不妊についての情報を得ることができないという状況です。不妊についての情報を知るきっかけを多く作り、もっと身近な情報としていつでも知ることができるようにしていく必要があります。

 

  1. 国(厚生労働省)が実施している「不妊に悩む方への特定治療支援事業」のほかに、各自治体で独自の支援を行っている場合もあります。詳しくはお住まいの自治体ホームページ等でご確認ください。
  2. 妻の年齢が40歳以上43歳未満の場合の助成回数上限は1子につき3回まで
  3. 妻の年齢が40歳未満の場合の助成回数上限は1子につき6回まで 参照:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/funin-01.html
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