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コラム

不妊予防・治療を取り巻く現状について

女性特有の病気・不妊の早期発見のために行う検査について

現在、企業の健康診断は男性を基準にして検査項目が決められています。そこに追加というかたちで、婦人検診として乳がんや子宮頸がんなどの検査が行われています。このように男性の検診に女性の検診を追加するというかたちではなく、女性特有の病気や不妊を早期発見するために、女性専用の健康診断が実施できることが望ましいです。

また、女性専用の健康診断が行われたとしても、病気を発見することだけに主眼を置くのではなく、もう少し時間をかけて個々の情報を加味しながら相談を受けたり、アドバイスをしたりできる機会を作っていけるのが理想的です。そのためには、検査をするだけではなく、患者に検査結果や今後の助言などを行える医師の育成も重要になってきます。

不妊発見のためのセルフチェックシートの開発について

不妊の早期発見をするためには、自分の状態を把握して自己管理することが大切です。海外ですでに利用されている不妊についてのセルフチェックシートを参考にして、自分の状態をチェックできるものを開発していきます。チェック項目をスコアー化して、自分である程度判断しやすいようなものの開発を目指しています。

日本と米国における男性不妊に対する認識の違いについて

日本では、カップルに子供がなかなかできないとき、男性側に問題があると考える男性はまだ少ないです。そのため、不妊検査にも女性だけで受けに来ることが多いという現状があります。一方米国では一緒に不妊治療を受けに来るカップルが多いです。日本の男性の意識を変えるためには、男性も不妊教育を受けることが大切です。

もし、女性だけで不妊検査を受けに来たとしても、男性にも検査が必要であると説明し男性にも精液検査を受けてもらうようにしているため、カップルの不妊治療で男性の検査が省かれることはありません。

男性不妊治療の流れ

精液検査は、産婦人科や泌尿器科で受けることができます。
検査の結果、男性側に問題があるとわかったときには専門の医療機関を紹介されるので、そちらで詳しい検査や治療を受けることになります。米国でも男性不妊治療の流れは、ほぼ日本と同じです。

男性不妊は、原因によって改善できるものと改善が難しいものがあります。その程度によりますが、体外受精、顕微授精、精巣内精子回収法など適応があれば選択肢となるため、医師に詳しく説明してもらってください。

胎児の染色体異常を調べる検査とその後の対応について

日本では積極的に染色体異常を調べる検査を受ける方は少なく、全体の1~2割程度に留まっています。その理由として考えられるのは、日本産科婦人科学会が、医療者側から積極的に出生前の染色体検査について情報提供すべきではないと提言していた時期があることが関連しているかもしれません。(現在ではその提言は変更されています。)

米国では、州が年齢に関係なく母体血清マーカー検査が受けられるようにプログラムしています。

染色体異常の検査は、母体血清マーカー検査をしてお腹の中の赤ちゃんの染色体異常の有無の確率を調べます。染色体異常の可能性があるとわかったら確定検査を受けるか患者さんが決めます。

確定検査は、針を刺して羊水を採取して赤ちゃんの染色体異常を調べる羊水検査、胎盤内にある絨毛細胞を採取して染色体異常の有無を調べる絨毛検査などが行われています。

高齢になるほど、卵子の老化により染色体が上手に分離しなくなってしまうため、染色体異常が起こりやすくなるといわれています。

染色体異常があるとわかったあとの選択

検査によって生まれてくる子供に染色体異常があるとわかった場合、医師はどのような状態で赤ちゃんが産まれてくるのか、どのぐらい生きていられる可能性が高いのかなどを患者さんに説明します。どうするか決めるのは患者さんですが、患者さんが納得のいく決断ができるように、医師は正しい情報を患者さんに伝える必要があります。1年以内に亡くなってしまう可能性が高い13番や18番の染色体異常が明らかになった場合、中絶を選択する方もいらっしゃいます。

染色体異常の検査をする出生前診断は、「中絶の助長につながる」「命の選別をしている「差別につながる」など倫理的な問題が議論となっています。

卵子の凍結保存における日本と米国の違いについて

米国では、卵子の凍結保存の認知度が高く、日本よりも行っている方も多くいます。
日本では、病気ではなく自分の希望で行う卵子凍結保存については、ごく最近認知されるようになってきました。卵子凍結保存は、妊娠出産を遅らせること選択することで、女性のキャリア形成期において選択の幅を広げるメリットがある一方で、結婚や出産する年齢が上がることで、今よりもさらに晩婚化が進むのではないか、という懸念が考えられています。

日本における卵子の凍結保存を取り巻く状況を変えるためには、卵子の凍結保存の社会的な理解の向上や様々な立場の人でディスカッションを行う必要があるといわれています。

米国における卵子の凍結保存についての現状

米国では、宗教的な考え方や個人的な倫理観などで卵子の凍結保存に反対している方もいますが、国や社会が決めるのではなく最後は個々人の考えで利用するか決断しています。

米国で卵子の凍結保存をした方の大部分は、将来結婚したパートナーとの間で子供を作るために利用されていますが、高齢の方の中には独身のまま精子バンクを利用する方もいます。

独身のまま精子バンクを利用しようと考えている方には、出産後に起こる可能性がある社会的な問題や子供の心理的な問題などの説明や相談、アドバイスなどが専門家によって行われています。また、ひとりで赤ちゃんを育てていくには色々と難しいこともあるため、出産後のサポート体制を整えてから精子提供を受けた方がよいというアドバイスしているようです。

(※2021年1月30日 株式会社ポピンズホールディングス主催:不妊予防・治療オンラインシンポジウムの内容より記事化いたしました)