不妊治療の流れと日本政府からの不妊治療の助成金等の支援状況

日本は急激な少子化に直面しており、令和元年の出生数は過去最少を記録しました。今後、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で更なる出生数の低下も懸念されています。
少子化対策を推進するためには、子供を持ちたい方が安心して子供を持てる社会を作ることが重要です。政府は、不妊治療の経済的負担を軽減すべく助成金支援拡充の実施、不妊治療の保険適用の実現への取り組み、不妊で悩む方に対する支援体制の強化などに行い、安心して子供を産み育てられる環境作りに取り組んでいます。

不妊治療の流れと助成金支援の拡充

不妊治療は、保険が適用されないと思っている方もいるかもしれませんが、保険適用される治療と適用されない治療があります。また、保険が適用されない代わりに助成金の支援を受けることができる治療もあります。

保険適用される不妊治療や助成金支援を受けられる不妊治療の区分を理解していただくために、まず不妊治療の流れを簡単にご紹介します。

不妊治療の流れと保険適用される治療

不妊治療の保険適用

不妊治療の流れの概略は以下のようになります。

①問診
②検査→検査で不妊の原因が見つかったらその治療
③一般不妊治療(タイミング法、人工授精)
④高度生殖補助不妊医療(体外受精、顕微授精)

検査には、血液検査や超音波検査、子宮卵管造影検査、感染症検査、ホルモン検査、精液検査などがあります。検査の結果から男性に問題があるケース、女性に問題があるケース、不妊の原因がわからないケースを診断します。

保険が適用されるのは、基本的には②の検査と不妊の原因の治療、③の一般不妊治療のタイミング法までです。検査の中には、精液検査や性感染症検査などのように保険が適用されない検査もあります。人工授精や高度生殖補助医療は保険適用されません。

行う検査の回数や使用する薬によって保険適用外となる場合もあるため、医療機関で確認するようにしてください。

不妊治療に対する助成金支援の拡充

不妊症・不育症への相談支援等

不妊治療を受けている方の経済的負担を軽減すべく政府は保険適用を実現するまでの間、助成金支援の拡充を決定しました。助成金支援の内容は以下の通りです。

対象年齢:妻の年齢が43歳未満という点は変更ありません。しかし、事実婚のカップルも支援が受けられるようになりました。

助成額:助成金の上限が30万円という点は変更有りません。しかし、2回目以降も30万円の助成金を受けられるように変更されました。

回数制限:40歳未満の方が受けられる支援は生涯で通算6回まででしたが、お子様1人ごとに6回まで(40~43歳の方は3回)支援を受けられるように変更されました。

所得制限:支援を受けられるのは夫婦合算の所得が730万未満と所得制限がありましたが、所得制限が撤廃されて誰でも支援を受けられるようになりました。

男性不妊治療への助成金額:助成額の上限が15万円でしたが、30万円に変更されました。

不妊治療の保険適用実施に向けての取り組み

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少子化対策の一環として、不妊治療の保険適用の実現を目指すとともに、保険外治療併用の仕組の手続きを行う予定です。

不妊治療の保険適用について

政府は、不妊治療の経済的負担の軽減を図るため、令和4年度からの不妊治療への保険適用の実現を基本方針としています。現在、実務をしている医師などから意見を集め、上記の工程表に基づき保険適用となる治療の選定などを検討しています。

不妊治療の保険外併用の仕組みの活用

現状では、保険適用の検査などと保険適用外の治療を受けた場合、全体が自費治療として実施されていることがあります。

検討した結果、保険外適用となった治療については、保険適用の治療と併用することで多くの方が受けられる治療となるような仕組みを作っていきます。保険適用外となった治療に関しても、安全性と有効性を明らかにするデータを集めて、将来的に保険適用を目指しています。

また、小児がんを患ってしまい卵子や精子などに影響を与える可能性がある放射線治療などを受ける方が、将来子供を産める可能性を残すための卵子凍結なども研究事業として始めることが決まりました。

不妊症・不育症への相談支援等

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不妊治療への経済的支援に加え、不妊症や不育症について悩む夫婦等を対象とした相談支援体制の強化を行っています。また、不妊症や不育症についての正しい知識の周知・広報にも力を入れています。

不妊専門相談センター事業

不妊や不育に悩む夫婦や家族が、不妊・不育についての質問や悩みの相談をすることができます。各都道府県、指定都市、中核市に設置されていて、専門の医師や助産師などが対応してくれます。無料で利用できるので、お気軽にお問合せしてみてください。

不妊症・不育症支援ネットワーク事業

不育症患者のグリーフケアを含めたカウンセリングやピア・サポートが受けられる機会が少ないことなどを改善するために、不妊症・不育症に悩む方へ寄り添った支援の充実を図るための事業です。

不妊症・不育症ピア・サポーター育成研修等事業

不妊症・不育症の経験した方をピア・サポーターとして育成のための研修会、医療従事者に対する研修を実施しています。

研修内容は、不妊症・不育症に関する治療や仕事と治療の両立、不妊症・不育症に悩む方との接し方などです。また、子供を持ちたいと願う方の選択肢として、特別養子縁組や里親制度の正しい情報を提供できるように研修を行っています。

不妊症・不育症に関する広報・啓蒙促進事業

不妊症・不育症についての認知度が低いことを改善するために、普及啓発事業です。普及啓発事業を通して不妊症・不育症に対する正しい情報の周知・広報、不妊治療を受けやすい職場環境整備の促進、子供を持ちたいと願う家庭の選択肢として里親や特別養子縁組制度の普及啓発などに取り組んでいきます。

第5次男女共同参画基本計画における不妊治療への取り組み

昨年末、第5次男女共同参画基本計画が閣議決定されました。

男女共同参画基本計画とは、「男女が社会において対等で、本人の意思であらゆる分野の活動に参加する機会が確保され、男女が政治的、経済的、社会的及び文化的利益をえることができ、ともに責任を担うべき社会を形成すること」の実現を促進するための計画です。

第5次男女共同参画基本計画は、令和12年度末までの「基本認識」、並びに令和7年度末までを見通した「施策の基本的方向」及び「具体的な取り組み」を定めたものです。

最近話題になった夫婦別性議論はこの中のひとつで、第5次男女共同参画基本計画には不妊に対する知識の啓蒙も含まれています。

現在の学校教育では、避妊についての教育は行っていますが、不妊についての教育は行っていません。

好きな人との間に子供が欲しくなったときに、不妊で望みが絶たれるような悲しいことが起きないように、不妊についての知識・教育を推進していきます。

学校教育の場で実際にどのように不妊教育が行われていくかは、さまざまな方の意見をお聞きして政府に提案していきたいと思っています。

(※2021年1月30日 株式会社ポピンズホールディングス主催:不妊予防・治療オンラインシンポジウムの内容より記事化いたしました)

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