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コラム

【不妊治療の正しい知識】高齢不妊のメカニズムと不妊予防について

不妊症とは

避妊をしないで夫婦生活を行い、1年経っても妊娠しない状態を不妊症といいます。現在、日本では不妊患者は増加しており、6組に1組のカップルが不妊の検査や治療を受けています。不妊症という診断は、妊娠しない期間で決まるため、何か原因を特定したものではないということに注意してください。

不妊症の方が増えている原因は?

不妊患者が増えている主な原因は、社会環境の変化により妊娠を考える年齢が高くなっているためです。のちに詳しくご説明しますが、年齢があがるにしたがい卵胞の数の減少と卵子の質の低下が同時に起こります。そのため、高齢になるほど妊娠しにくくなり、不妊で悩まれる方が多くなってしまうのです。

初婚年齢と出生時年齢の変化

晩婚化の影響

厚生労働省の人口動態統計によると、1975年の平均初婚年齢は男性27.0歳、女性24.7歳であったのに対して、2015年には男性31.1歳、女性29.4歳と男女ともに晩婚化が進んでいることがわかります。

第1子出生時の母親の平均年齢をみると2015年は30.7歳、1975年は25.7歳です。さらに1975年の第3子出生時の母親の平均年齢は30.3歳であることから、現在の第1子出生時の母親の平均年齢よりも1975年の第3子出生時の年齢の方が若いことがわかります。
これらは、晩婚化による影響で子供を産むタイミングも遅くなっていることを示しています。

年齢ごとの不妊治療による分娩率

女性の年齢別の不妊治療における分娩率

上のグラフは、日本産婦人科学会が集計したデータを基に厚生労働省が作成したものです。
これから不妊治療(体外受精)を受けている女性の年齢分布と分娩率がわかります。

まず、幅広い年齢層の女性が体外受精を受けられていますが、最も多いのは39歳とかなり高齢となっていることがわかります。

分娩率は、1回体外受精を受けた方が分娩までいった割合をあらわしたものだと思ってください。30歳では体外受精を受けた19.9%の方が分娩までいきましたが、35歳では16.3%、40歳では7.7%、45歳では0.6%と高齢になるほど低くなっていることがわかります。

これらより、体外受精を受けている女性は高齢の方が多く、高齢になるほど出産しにくいことを示しています。

卵子と精子の違いは?

男性は精巣の中に精子のもとになる細胞(幹細胞)があるため、女性が妊娠しにくくなる40代中盤以降もしくは閉経する50代になっても、新しい精子が作られます。

それに対して女性は、胎児のときに卵子が作られて以降は新しく作られることはありません。卵子は、卵巣の中で原始卵胞(卵子の素となる細胞)の状態で生まれたときから閉経するまで保存されています。ある間隔で定期的に発育を開始して発育卵胞となり、さらに成熟して成熟卵胞となったあと卵子が排卵されます。

卵子は新しく作られることはないため、その数は1ヶ月に約1000個ずつ消失していきます。残りの卵胞数が1000個ぐらいになると卵胞が発育しなくなり、その結果、閉経が起こります。閉経が起こる年齢は、一般的に50歳前後です。

高齢不妊の問題点

女性は高齢になると卵子に2つの問題が起こります。

まずひとつ目の問題点は、卵子の数が減ってしまうことです。先ほどご説明したように卵子は新たに作られることがないため、高齢になるにしたがい数が減っていってしまいます。これを卵巣機能不全といいます。
卵巣機能不全とは、卵巣内の原始卵胞の数が減少して卵胞が育たなくなる状態です。卵胞が育たなければ排卵は起こりませんし、卵胞から分泌される女性ホルモンが出なくなります。その結果、無月経(閉経)となってしまうのです。

もうひとつの問題点は、卵子が老化してしまい卵子・胚(受精卵)の質が低下してしまうことです。
このふたつが同時に起こることが、高齢の女性の不妊治療では大きな問題となります。

卵巣機能不全の予測と判別方法

卵巣機能不全は、ある程度予することが可能です。

卵巣機能不全の症状として生理不順があります。
生理不順は、生理周期が短くなったり長くなったりする状態をいいます。一般的な症状であるため、一度ぐらい経験したことがある女性は少なくないでしょう。巣機能不全の場合には、通常の28-30日くらいの月経周期だった方でも、卵子の数が減るにしたがい月経周期の早期にどんどん排卵するようになるため23―25日周期くらいと頻繁に月経が起こるようになってきます。さらに卵子の数が減ってくると、今度は毎回は排卵が起こらなくなるため、月経が2-3ヶ月に一回と不順になってきます。月経不順の原因は、ストレスや過度なダイエット、ホルモンバランスの乱れなどさまざまありますが、卵巣機能不全の初期症状でもあるため注意が必要です。

卵巣機能不全と一般的な生理不順の見分け方

生理不順がよく起こる女性には、卵巣機能不全の初期症状としての生理不順が起きても判断が難しいでしょう。しかし、一般的な生理不順と卵巣機能不全の症状としての生理不順は、簡単な検査で見分けることができます。

それは、採血して抗ミュラー管ホルモン(AMH)の値を調べる検査です。
抗ミュラー管ホルモンとは、卵巣にある一定の発育段階になった卵胞から分泌されるホルモンです。血中のAMH値を調べると、卵巣内にどのぐらいの卵胞が残っているのかを予測することができます。

不妊の予防法

不妊の原因はさまざまですが、年齢がもっとも妊娠できるかどうかに影響してくる要因になります。「早く結婚して、早く妊娠する」というのが最も効果が高い予防法になりますが、実際そううまくは行かないというのが現実ではないでしょうか
自分ですぐにできる予防法と早期発見するための検査法もありますのでご紹介します。

生活習慣の改善

喫煙は男女ともに不妊リスクが高まることがわかっているため、喫煙習慣がある方は禁煙するようにしましょう。

また、男性の場合は履くパンツの種類によって、精子の質に違いができるという報告がありました。ボクサータイプのような締め付けるタイプのパンツを履くと、精巣が温まってしまい、質の高い精子を作るためにはあまり良い環境ではないとされています。

性感染症予防

不妊の原因となる性感染症として注意が必要なのは、クラミジア感染症です。
クラミジアに感染していても女性が通常無症状であり、気が付かないうちに感染が広まってしまいます。症状が進行してしまうと卵管が詰まってしまったり、周囲の組織と癒着してしまったりすると、不妊の原因となってしまいます。クラミジアへの感染は、性行為時にコンドームを着用するなどで防ぐことができます。
現時点で感染しているかどうかは、婦人科を受診すると簡単に調べてもらうことができます。

不妊の早期発見

不妊の原因のひとつである卵巣機能不全や造精機能障害を出来るだけ早く発見できれば、不妊の予防につながります。
造精機能障害は、精子を作る機能に障害がある状態で、原因がわかっている男性不妊の大部分を占めています。
不妊症の原因の約半分は男性側ですので、精子の検査をせずに、妊活を続けていて、時間だけが経過し、青になって調べてみたら精子を造れていなかったことが判明するケースがあります。女性の年齢が不妊原因として重要な要素であることからわかるように、「時間を無駄にしないこと」はとても大切です。

卵巣年齢を予測するために、女性が受けるスクリーニング検査として先ほどご紹介したAMH検査があります。卵巣機能が低下している(卵子の残り数が少ない)方は、卵子がなくなる前に早期発見・治療が必要ですのでとても大切な検査になります。海外ではセルフチェックツールとして「FertiSTAT(ファーティスタット)」があります。セルフチェックツールは、自分で不妊の早期発見のための検査ができるため大変便利です。現在、ポピンズとともにFertiSTATを改良した日本版セルフチェックツールの開発に取り組んでいます。

不妊のスクリーニング検査で異常が発見されたら?

スクリーニング検査で異常が見つかったら、ライフプランの見直しをする必要が出てきます。予定していた時期よりも早めに子供を作ることが可能かどうかを、考えることが必要になるかもしれません。

卵子・精子・胚の凍結保存が利用できます

早めに子供を作ることが無理である場合は、卵子・精子・胚を凍結保存しておき、子供が作れる時期がきたらそれを解凍して利用することもできます。

卵子の凍結保存は、がん治療などで卵子にダメージを与える可能性がある抗がん剤や放射線治療を受ける方にも利用されています。治療前に卵子を凍結保存しておき、癌が治ったあと解凍して子作りに使われています。凍結保存は技術的にほぼ確立されているため、解凍後も大きく機能を損なうことなく利用することが可能です。但し、高齢での出産はリスクを伴うため、可能な限り早い妊娠・出産が大切になります。

不妊についての正しい知識を身につけましょう

まず、妊娠できる年齢には限界があるということを理解しておいてください。特に女性は新しく卵子が作られないため、妊娠と年齢の関係性を知っておきましょう。

また、不妊は予防できる不妊症があります。そのためには、若いうちに不妊について学べる機会を設け、正しい知識を身につけることが重要です。

将来子供を授かりたいのか、何人子供が欲しいのか、など人生の早い段階で自分やパートナーと真剣に向き合うことで、自分が希望するライフプランを実現しやすくなります。

妊娠や出産についての正しい知識を身につけることで、不妊の予防や妊娠年齢の限界、ライフプランを考えるきっかけにして頂ければと思います。

(※2021年1月30日 株式会社ポピンズホールディングス主催:不妊予防・治療オンラインシンポジウムの内容より記事化いたしました)

河村 和弘 氏

国際医療福祉大学 医学部 産婦人科 教授
国際医療福祉大学 高度生殖医療リサーチセンター長